ことばには、大きく分けて、[Speech]と[Language]の2種類があります。
STからすると当たり前のことなのですが、一般の方からすると、あまり馴染みのない視点のような気がします。
ご本人さん、ご家族さん、ケアマネさん、保健師さんなどが、「ことばの障害」を理解するうえで、とても大事なことのような気がしますので、少し書いてみたいと思います。
Language(ランゲージ)とは?
脳の中にあることばです。
私たちの脳には、言語野、とよばれる部位があり、話したり、聞いたり、読んだり、書いたり、を担当しています。
りんごを目で見て、「りんご」と言えるまでには、頭の中では次のような仕組みになっています。
反対に、”RI N GO”という音を聞いて、りんごのことだ!、と分かるのも、脳の言語野のおかげです。
言語野は、右利きの9割以上の方は左脳にあります。
不思議なことに、左利きの場合は、左脳だったり右脳だったり、両方だったりします。
言語野にトラブル→Languageの障害が生じる
言語野、あるいはその周辺に、なにかしらの問題(トラブル)が生じると、Languageの障害が生じます。
Languageの障害(代表的なもの)
- 失語症
- 言語発達遅滞(ことばの遅れ)
- 知的障害/認知症(重度)
Speech(スピーチ)とは?
こちらは、話すときのことばです。
のどや口にトラブル→Speechの障害が生じる
発声や発音に、なにかしらの問題(トラブル)が生じると、Speechの障害が生じます。
Speechの障害(代表的なもの)
- 口腔がん/喉頭がん
- 舌や頬の運動麻痺
- 機能性構音障害
簡単な見分け方…「文字を書ける?」
Speechの問題の場合、話しことばだけが苦手になるので、書いたり、聞いたり、読んだりすることには特に問題はありません。
話すことが難しいけれども、文字を書いたり、スマホやパソコンの文字が入力できるのであれば、Speechの障害と思われます。
(ただし、Languageの障害の中には、純粋失読や学習障害(LD)のように、読んだり書いたりすることだけが難しくなる症状や、吃音や場面かん黙のように、原因がまだよく分からないものもあったりします)
言語訓練ってなにをするの?
言語聴覚士は、訓練を始める前に、ことばの問題が、Languageの問題なのか、Speechの問題なのかを明らかにするために、検査(評価)を行います。
・・・というのも、Languageの練習と、Speechの練習では、言語訓練の内容がまったく異なるからです。
その上で、いちばん合っているかな…という訓練内容を提案していきます。
以上、本人さんもご家族さんも、ケアマネさんも保健師さんも、誰でも知っておいて損のない、「ことばには2種類ある」話でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。